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健康コラム

Vol.96

1000万人以上が悩む肩こり・痛みを解消する

2022.06.01

運動不足や姿勢の悪さ、ストレスなどが要因

病気やけがなどの自覚症状がある人(有訴者)のうち、男性では腰痛に次いで2位、女性では1位を占めるのが肩こり※。同調査から推計すると、1000万人超の人たちが肩こりに悩まされている計算です。

  • ※厚生労働省「2019年国民生活基礎調査」より

直立歩行の人間は頭部を首や肩で支えなければいけないうえ、両腕と肩甲骨の重みも肩で支えているため、肩への負担が大きく、肩こりを起こしやすい構造になっています。加えて、さまざまな生活習慣上の要因が肩こりを悪化させていると考えられます。

大きな要因のひとつが運動不足。筋力の衰えに加えて、血流の悪化を招く原因にもなり、肩こりを起こしやすくします。車での移動に慣れ、デスクワーク中心の仕事が増えた私たちの生活は慢性的な運動不足になりがちです。さらに新型コロナウイルスの感染拡大によるステイホーム生活で、運動の時間が減ったという方もおられるでしょう。

長時間の座位や姿勢の悪さも肩こりの要因です。長時間座った姿勢でいると、肩や腰に負担がかかるうえ、血流も悪くなります。パソコンやスマートフォンの画面を長時間見ている場合などに起きやすい、猫背や巻き肩(両肩が胸よりも前に出て内側に丸くなった状態)などの姿勢が悪い状態も肩こりを悪化させます。

肩こりを誘発する要因

デスクワーク中心の生活をしている人は、▽いすの背もたれにもたれかからず浅めに座る▽背筋を伸ばす▽太ももと床が平行になるように座る▽へそ下5センチメートルあたりに力を入れる▽あごを引く、といった正しい姿勢を心がけましょう。また、1時間に1回は立ち上がって軽くストレッチをするのも効果的です。

このほか、ストレスも肩こりの原因のひとつ。過剰なストレスは自律神経の働きを乱し、その結果、血管の筋肉が収縮して血流を悪くするためです。

体の冷えも血管を収縮させて血流を悪くするので、夏場はエアコンによる冷え過ぎに注意。また、たばこに含まれるニコチンも血管を収縮させるので、肩こりに悩んでいる人は禁煙をおすすめします。

なお、重度の肩こりや肩の痛みは別の病気が原因の場合があります。次号以降で紹介する五十肩や腱板断裂といった肩関節の病気に加え、狭心症や脳動脈瘤などの病気が原因のケースもあるので、重い肩こりや肩以外に症状がある場合はかかりつけ医などに相談してください。

池上 博泰

監修/池上 博泰

東邦大学医学部整形外科学講座教授。日本肩関節学会理事長。専門は肩・肘・手の外科、関節リウマチなど。

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