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健康コラム

Vol.97

痛みが長期化することもある五十肩

2022.07.01

3段階の経過に合わせた適切な治療で早期改善

中高年期に発症する「五十肩」=「肩関節周囲炎」はどちらも医学用語で、日本整形外科学会用語集にも収載されています。突然肩に激しい痛みを感じ、着替えや洗顔といった日常動作が困難になります。痛むのは多くの場合、片方の肩のみで女性にやや多くみられます。

肩関節は、関節包や滑液包と呼ばれる袋状の組織に覆われ、その中には関節が滑らかに動くよう潤滑油の働きをする液体が入っています。この関節包や滑液包、またはその周辺に炎症が起こるのが五十肩です。

個人差はありますが、その経過はおおむね発症から1~3か月続く「急性期」、その後1~6か月続く「拘縮期」、さらに6か月~1年続く「回復期」の3段階をたどります。

急性期はちょっとした日常生活の動作で強い痛みを感じるほか、安静時にも痛みを覚えて眠れないこともあります。

次の拘縮期は炎症が治まり、安静にしているときなどには痛みをほとんど感じません。ただし、肩関節の動かせる範囲は狭まっており、これは関節包に癒着が起こって縮むため関節が滑らかに動かせなくなる「拘縮」が起きていることによります。

最後の回復期は痛みがほぼ治まり、日常生活で不便を感じることは少なくなりますが、本人が意識していないうちに以前より肩を動かせる範囲が制限されていることがあります。

「五十肩」の経過

五十肩は自然に治ることが多い病気ですが、治るまでの経過や期間には個人差があるため、痛くて眠れないなど日常生活に支障がある場合は整形外科の受診をおすすめします。

治療は経過に合わせて適切な方法を選びます。急性期は安静にすることが基本です。痛みが強ければ、消炎鎮痛薬の貼り薬や飲み薬を使い、痛みが軽快しない場合はステロイド薬、ヒアルロン酸、局所麻酔薬も使用します。拘縮期は肩関節が硬くならないように、無理のない範囲で徐々に運動を取り入れます。主治医の指示に従って運動をしてください。

回復期は拘縮期以上に積極的に肩の運動を行います。ただし、高いところや後ろにあるものを無理に取ろうとして症状がぶり返す危険がありますので、油断は禁物です。

肩関節の動きがなかなか改善しない場合は、癒着している関節包を破る治療(薬の注入や関節鏡手術など)を行う場合もあります。

池上 博泰

監修/池上 博泰

東邦大学医学部整形外科学講座教授。日本肩関節学会理事長。専門は肩・肘・手の外科、関節リウマチなど。

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