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健康コラム

Vol.98

五十肩との見極めが大切な腱板断裂

2022.08.01

運動療法で改善しない場合は手術も検討

前号でご紹介した五十肩(肩関節周囲炎)とほとんど同じ症状の病気に、腱板断裂があります。肩の筋肉と上腕骨部の骨頭と呼ばれる部分をつないでいる腱板が切れたり、裂けたりして痛みを引き起こす病気です。完全に切れてしまう完全断裂と部分的に切れる不全断裂があります。

腱板は肩の周囲にある4つの筋肉(棘上筋・棘下筋・肩甲下筋・小円筋)の腱の総称で、断裂しやすいのは棘上筋腱です。年齢が上がるにつれ断裂の頻度が高くなり、男性に多く、また利き腕に多く発症します。加齢に伴う腱板の質の低下に加え、手を上げるスポーツなどによる肩の使い過ぎやけがなどが原因です。

肩を動かすと痛みが出たり、痛みで腕が上がらなくなるなど、五十肩と同様の症状が現れます。ただ、五十肩が多くの場合、徐々に痛みがなくなって自然に治っていくのに対し、腱板の完全断裂の場合は痛みが治まっても断裂した腱が自然につながることはありません。また、五十肩が、腕がこれ以上は上がらないという段階で痛むのに対し、腱板断裂は腕の上げ下げの途中で痛みが起きるのも特徴です。さらに肩を動かすときにシャリシャリと断裂した腱板がこすれる音がすることもあります。

右肩を前方から見た図

医療機関では触診や肩の動きの確認に加え、エックス線、超音波、MRIなどの画像検査で診断します。腱板断裂と診断された場合は飲み薬や注射などによって痛みをやわらげた後、運動療法を行います。ひとつは五十肩と同様、肩関節の可動域が狭くなるのを防ぐストレッチ。腕を引っ張ったり、振り子のように腕を動かしたりする運動があります。

もうひとつは、傷んだ腱板への負担を抑えるために傷んでいない筋肉を鍛える運動で、ゴムバンドを使った運動などが推奨されます。いずれも担当医の指示に従ってください。

それでも症状が改善しない場合は手術を検討します。最初に検討される手術法は断裂した腱板を修復するもので、関節鏡という器具を使ったり、肩を切開したりして断裂した腱板を修復します。一方、高齢者で、断裂が大きく修復が難しい場合などは肩関節を人工関節に置き換える手術も選択肢になります。

腱板断裂と五十肩の見極めは難しいため、気になる症状がある場合は自己判断せず、整形外科専門医の診察を受けることをおすすめします。

池上 博泰

監修/池上 博泰

東邦大学医学部整形外科学講座教授。日本肩関節学会理事長。専門は肩・肘・手の外科、関節リウマチなど。

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