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健康コラム

Vol.99

新型コロナ禍で増加中?帯状疱疹に要注意

2022.09.01

ブースター効果の機会減少も発症増加の要因

帯状疱疹は80歳までに約3人に1人が発症するとされる皮膚の病気(感染症)です。50歳以上の中高年層に多く発症しますが、10~30歳代にも少なからず発症例が見られており、若い人も油断はできません。

症状はチクチク、ピリピリする痛みが起き、続いて赤く小さな水膨れを伴う帯状の発疹が出現。体の左右どちらかに症状が出ることが多く、また発症部位は上半身が比較的多く、顔や首といった他人の視線が気になる場所に起きることもあります。

原因ウイルスは「水痘-帯状疱疹ウイルス(VZV)」で、実はこれに初感染したときになるのが「水ぼうそう(水痘)」。5歳ごろまでに多くの人が発症し、通常は1週間程度で症状が収まりますが、体内からウイルスがなくなるわけではなく、長期にわたって潜み続け、あるときウイルスが再活性化して帯状疱疹として発症するのです。引き金となるのは、加齢やストレス、疲労などによる免疫の機能低下と考えられています。

帯状疱疹の発症率の推移

さて、日本では近年、帯状疱疹の発症が増えているという調査報告があります。外山皮膚科(宮崎県日南市)の外山望院長らが1997年から宮崎県で続けている宮崎県皮膚科医会の疫学調査「宮崎スタディ」です。この報告によると、帯状疱疹発症率は2009年からの10年間で、約1.38倍に増加しています(グラフ参照)。

その原因と考えられているのが、ブースター効果の機会減少です。ブースター効果とは日常的にウイルスに触れることで免疫が活性化されることを指します。核家族の増加や少子化、さらに2014年から水ぼうそうワクチンの定期接種が始まったことによる水ぼうそう発症数の減少で、大人が水ぼうそうの子どもに触れる機会が減り、ブースター効果を得にくくなっていると考えられています。

最近は新型コロナウイルスが帯状疱疹の発症リスクを高めているとの海外の研究結果も出ており、グラクソ・スミスクライン米国オフィスが発表したプレスリリースによると、米国での約200万人から収集したデータの解析結果から、50歳以上で新型コロナウイルスと診断された人は、診断されなかった人に比べて帯状疱疹の発症リスクが15%高く、新型コロナウイルスによる入院患者の場合は同リスクが21%高かったというのです。日本での研究結果が待たれるところです。

渡邉 大輔

監修/渡邉 大輔

愛知医科大学病院皮膚科部長(皮膚科学講座教授)。皮膚ヘルペスウイルス感染症(帯状疱疹・単純ヘルペス)に詳しい。

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