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健康コラム

Vol.102

睡眠休養感と睡眠時間・床上時間の関係

2022.12.01

高齢世代は長すぎる 床上時間に注意

睡眠と健康の関係についての興味深い研究結果が2022年に発表されました。国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センターと学校法人日本大学、公立大学法人埼玉県立大学の共同研究によるもので、働き盛り世代(40~64歳)と高齢世代(65歳以上)の2つのグループに分けて、現在のどのような睡眠状態が、将来の総死亡リスクになるかを明らかにしたものです。

働き盛り世代と高齢世代、双方の総死亡リスクと関係していた要因が「睡眠休養感」です。これは「夜間の睡眠により休めた感覚」に基づく睡眠の質の指標で、生理的な睡眠充足度を反映すると推測されます。人によって感じ方は異なり、同研究では本人の主観で点数化しています。

この「睡眠の質」に加え、「睡眠時間」、そして「床上時間」(起きている時間も含めた、睡眠をとるために寝床で過ごした時間)の3つと総死亡の関係を調べた結果、働き盛り世代では「睡眠時間が短く、かつ睡眠休養感のない睡眠」が総死亡リスクを高めることがわかりました。とくに1日の睡眠時間が5時間30分以下の場合に総死亡リスクが上がります。

一方、高齢世代では睡眠時間と総死亡リスクの間に有意な関連はなく、「床上時間が長く、かつ睡眠休養感のない睡眠」が総死亡リスクを高めることもわかりました。とくに床上時間がおおむね8時間を超える場合に総死亡リスクが高くなっています。

必要な睡眠時間は加齢とともに短くなり、60歳では1日6時間ほどで十分と考えられています。高齢世代は「健康のためにもっと眠らなくては」と必要以上に寝床にとどまることがストレスになったり、活動量が相対的に減少したりして健康に悪影響を与えている可能性があります。

睡眠の状態と総死亡リスクの関係

まとめると、働き盛り世代は短い睡眠時間、高齢世代は長い床上時間に注意し、併せていずれも「睡眠休養感」を確保するよう心がける必要があります。睡眠休養感=睡眠の質を上げるためには、寝る前にリラックスできる時間をつくる、朝起きたらなるべく日の光を浴びる、眠れないときに無理に眠ろうとしないなどを心がけてみましょう。

なお、寝つけない、熟睡感がない、十分に眠っても日中に強い眠気に襲われるといった問題が続いている場合は早めに睡眠専門医などに相談するようにしましょう。

栗山 健一

監修/栗山 健一

国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所睡眠・覚醒障害研究部部長。専門は睡眠障害。

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