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健康コラム

Vol.103

生活の質を低下させる睡眠中の異常行動

2023.1.01

悪夢障害とレム睡眠 行動障害には注意を

睡眠中に起こる異常行動を総称して「睡眠時随伴症」と呼びます。睡眠にはノンレム睡眠とレム睡眠の2種類に分けられ、一晩の間に両方が繰り返し出現。睡眠時随伴症はノンレム睡眠時とレム睡眠時で、それぞれ特徴的な症状を呈します。

ノンレム睡眠時の症状で代表的なのが、睡眠中に叫び声や泣き声を上げたりする「夜驚症(やきょうしょう)」や寝床を出て歩き回り、ときには走り出すこともある「睡眠時遊行症」です。

行為中に周囲が覚醒させるのは困難で、本人は何が起こったかを思い出せず、夢見は伴いません。ノンレム睡眠から不完全に覚醒した、いわゆる「寝ぼけ」と考えられます。多くは小児期に始まり、思春期早期に自然に治まりますが、まれに成人しても持続することがあります。本人や周囲の人に危険がおよぶ可能性があるときは治療を検討しましょう。

一方のレム睡眠時の代表例は「悪夢障害」と「レム睡眠行動障害」です。

悪夢は誰でも見る可能性がありますが、頻繁に生じて眠りを妨げ、日常生活に支障をきたす場合は悪夢障害の可能性があります。小児期に現れ、成長とともに治まることが多いのですが、成人に起きることもあります。ストレスが原因のひとつとされ、成人の場合は心的外傷後ストレス障害(PTSD)やうつ病に合併して発現することが多いといわれています。新型コロナウイルスにまつわるストレスから悪夢障害に悩む人が増えているとの指摘もあります。

寝る前にリラックスできる時間を設けたり、日中にウオーキングなどの軽い運動をしたりしてストレスを軽減させるよう心がけてみましょう。悪夢を見るのが怖くて眠れなくなったり、睡眠不足になるなど、症状が重いと考えられる場合は精神科や睡眠外来などを受診しましょう。

レム睡眠行動障害はレム睡眠中に突然叫んだり、悲鳴を上げて飛び起きたりする病気です。立ち上がって暴れたり、隣で寝ている人をたたいたりするような暴力的な行動をすることもあります。悪夢を見ていることが多く、夢の中での行動を現実でもしてしまっているのです。

50歳以上の男性に多く、パーキンソン病やレビー小体型認知症との関連も指摘されています。入院して検査を受け、場合によっては治療が必要になります。精神科や脳神経内科で専門医療が受けられます。

「睡眠時随伴症」の分類と主な症状

栗山 健一

監修/栗山 健一

国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所睡眠・覚醒障害研究部部長。専門は睡眠障害。

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