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健康コラム

Vol.105

生活習慣の見直しで高血糖を予防する

2023.3.01

健康診断の血糖値やHbA1cの値をチェック 初期には症状が出ない糖尿病の怖さを知る

血液中に含まれるブドウ糖の濃度を示す「血糖値」が高くなり、一定の要件を満たすと、糖尿病と診断されます。体内では膵臓から分泌されるインスリンというホルモンが血糖値の上昇を抑える役割を果たしていますが、何らかの原因でインスリンの分泌が不足したり、効き目が弱くなったりすることで血液中のブドウ糖の量が増え、糖尿病を発症します。

糖尿病で血糖値が高い状態が続くと、全身の血管や神経がダメージを受けます。その結果、脳梗塞や心筋梗塞といった命にかかわる病気を発症するリスクが高まるのです。また、目の網膜が障がいを受けて視力が低下し、場合によっては失明することもある「糖尿病網膜症」、腎臓の機能が衰え、進行すると人工透析を受けなければならなくなる「糖尿病腎症」、手足の先の神経が鈍くなり、壊疽(えそ)を引き起こすこともある「糖尿病神経障害」(総称して糖尿病の3大合併症と呼ぶ)を発症することもあります。

そんな糖尿病について、厚生労働省は20歳以上の人のうち、「糖尿病が強く疑われる者」が約1000万人、「糖尿病の可能性を否定できない者」が約1000万人いると推計しています(2016年国民健康・栄養調査)。成人人口の約5人に1人にあたる約2000万人がすでに糖尿病を発症しているか、もしくはその予備群であると考えられるのです。

糖尿病はかなり血糖値が高くならないと症状が出ないことも注意を要する点。症状が出たときには進行しているケースが珍しくありません。このため、症状がないときから血糖値に注意する必要があるのです。

定期健康診断などで血糖の状態を示す検査数値には「空腹時血糖値」と「ヘモグロビンA1c(HbA1c)」があります。いずれも血液検査で、前者は10時間以上食事をしていない状態で測定する血糖値※。後者は血液中で酵素を運んでいるヘモグロビンのうち糖と結合したものの割合を示す数値で、最近1~2か月間の血糖の状態がわかるとされています。

前者が126mg/dL以上、または後者が6.5%以上の場合、糖尿病の疑いがある糖尿病型とされ、専門医でより詳しい検査を受けることが必要です。また、それより低くても前者が110mg/dL以上、あるいは後者が6.0%以上の場合も危険水域ですので、専門医に相談することをおすすめします。

  • 糖尿病型を判定する血糖値にはこのほか、食事と採血の時間を問わずに測定する「随時血糖値」、ブドウ糖負荷検査を行って2時間後に測定する「ブドウ糖負荷後2時間血糖値」などがあります。

糖尿病とかかわりの深い2つの検査数値

塚本 和久

監修/塚本 和久

帝京大学医学部内科学講座主任教授、附属病院内分泌代謝・糖尿病科長。専門は糖尿病・脂質異常症・代謝疾患。

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