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健康コラム

Vol.106

食後に血糖値急上昇の血糖値スパイクに注意

2023.4.01

血管を傷つけ脳梗塞や心筋梗塞の発症要因に

糖尿病は、膵臓の細胞が壊れてインスリンがつくれなくなる1型と、遺伝的な要因や生活習慣、加齢などが原因で発症する2型に大別され、2型が9割以上を占めています。

遺伝的な要因とは家系的にインスリンを分泌しにくい素因をもっているということで、家族や親戚に糖尿病患者さんがいる場合が多いです。一方、生活習慣の要因とは飲み過ぎ・食べ過ぎなどの不適切な食生活や運動不足がインスリンの効きを悪くして血糖値を上昇させることを意味しており、このような生活習慣を改善することが必要です。1型はインスリン治療が必須ですが、2型は生活習慣を改善した後、必要に応じて内服薬やインスリン注射などを併用することになります。

ところで、血糖値に関連して注目されているのが「血糖値スパイク」。食前の血糖値は正常なのに、食後に短時間だけ急上昇し、次の食事の時間帯にはほぼ正常値に戻る現象です。血糖値の変動を示すグラフがやや尖った釘(スパイク)のような形になることからその名がつきました。

短時間とはいえ血糖値の異常な上昇が繰り返されると、糖尿病と同様に血管の内側がじわじわと傷つけられて動脈硬化が進み、脳梗塞や心筋梗塞のリスクを高めるほか、アルツハイマー型認知症の原因物質を脳に蓄えることなどがわかっています。

とはいえ、通常の健康診断などで測定する空腹時血糖値に異常がない場合、血糖値スパイクは見逃されている可能性があります。そのような場合、血糖値スパイクの有無を確認するもっとも確実な方法は、ブドウ糖液を飲んでから血糖値を経時的に測る75g経口ブドウ糖負荷試験です。気になる方は、総合病院や糖尿病治療を行っているクリニックなどで相談してみてください。

空腹時血糖値で血糖値スパイクの可能性があるかどうかを判断するのは困難ですが、参考になる可能性のある数値はあります。それが前回もご紹介したヘモグロビンA1c(HbA1c)で、これは通常の健康診断の検査項目に含まれています。最近1~2か月間の血糖の状態がわかる数値なので、仮に空腹時血糖値は正常なのに、HbA1cが高めと判定されたら血糖値スパイクの可能性があります。そうした方は75g経口ブドウ糖負荷試験を受けることをおすすめします。

  • このほかにも別の病気を原因とした糖尿病や妊娠中に診断される妊娠糖尿病などがあります。

糖尿病とかかわりの深い2つの検査数値

塚本 和久

監修/塚本 和久

帝京大学医学部内科学講座主任教授、附属病院内分泌代謝・糖尿病科長。専門は糖尿病・脂質異常症・代謝疾患。

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