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健康コラム

Vol.108

耳鳴りやうつの原因にもなる難聴

2023.6.01

突発性難聴は早期の治療開始が改善のカギ

聴覚に異常をきたし、音が聞こえにくくなる難聴。それ自体がQOL(生活の質)の悪化に直結することに加え、耳鳴りやうつの原因になることもあり、注意が必要です。

私たちの耳は大きく、外耳・中耳・内耳の3つに分かれます。一番外側にある外耳は外から入ってきた音を集めてその奥にある鼓膜を震わせる、集音の役割を果たす部位。中耳はその振動を、耳小骨(じしょうこつ)を経て内耳に伝え、内耳のなかの蝸牛(かぎゅう)がそれを電気信号に変えて脳に伝えることで、私たちは音を聞き取ることができます。

難聴は音を集めて伝達する役割を果たしている外耳と中耳に生じた異常が原因で起きる「伝音難聴」、振動を電気信号に変換する役割を果たす内耳や聴神経、脳の異常が原因で起きる「感音難聴」、伝音難聴と感音難聴が重なった状態の「混合難聴」の3つに大別できます。伝音難聴はテレビのボリュームを落としたように音が小さく聞こえ、感音難聴は音が小さく聞こえるとともに音の質が劣化して言葉がはっきり聞き取れなくなることが特徴です。

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伝音難聴を引き起こす病気は耳の奥に耳あかを押し込んで外耳道がふさがる耳垢栓塞(じこうせんそく)、耳管から細菌などが侵入して炎症で鼓膜に穴が開く急性中耳炎などが挙げられます。一方、感音難聴は加齢による難聴(加齢性難聴)の多くが該当するほか、内耳にリンパ液がたまるメニエール病や原因不明の急性低音障害型感音難聴などのケースもあります。

40~60歳代の働き盛りに多く見られる突発性難聴も感音難聴に含まれるもので、突然、耳の聞こえが悪くなり、耳鳴りやめまいが起きる原因不明の疾患です。ストレスや過労、睡眠不足、糖尿病などがあると起こりやすいことがわかっています。

前日まで異常はなかったのに、朝起きてテレビをつけたら音が聞こえにくかったなど、前触れもなく起きることが珍しくありません。片方の耳に起きることが多いのですが、まれに両耳に発症するケースもあります。高音だけ聞こえなくなる人もいれば、まったく聞こえなくなる人もいるようです。

治療はステロイド薬の投与が中心で、血管拡張薬などを組み合わせることもあります。早めに治療を開始することで完治や改善の確率が高まりますので、症状に気付いたらすぐに耳鼻咽喉科を受診してください。

小川 郁

監修/小川 郁(かおる)

慶應義塾大学医学部耳鼻咽喉科教授を経て同大名誉教授。オトクリニック東京院長。専門は聴覚障害の予防・治療。

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