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健康コラム

Vol.109

イヤホンやヘッドホンの利用に注意

2023.7.01

音量をなるべく絞り 1時間に1回は休憩を

大きな音にさらされることで起きる難聴を「騒音性難聴」、「音響性難聴(音響外傷)」などと呼びます。騒音性難聴は工場での機械の音や工事現場で発する騒音などが、音響性難聴は爆発音やコンサート会場などでの大音響が原因で起き、音響性難聴のうち、イヤホンやヘッドホンを使って大きな音を聞き続けることで起きる難聴を「イヤホン難聴」、「ヘッドホン難聴」と呼び、近年、世界的に問題視されています。

WHO(世界保健機構)は、スマートフォンなどの個人用オーディオ機器の使用や、ナイトクラブ、バー、スポーツイベントなどの騒がしい娯楽施設での音により、世界で11億人の若者(12~35歳)が難聴のリスクにさらされていると警告。一方で、新型コロナウイルスの流行以後、イヤホン・ヘッドホンの利用時間が「増えた」と答えた人が32.4%(「減った」は7.6%)に上るという調査結果もあり※、1人で過ごす時間が増えてイヤホン・ヘッドホンの利用時間が延びている可能性もあります。

イヤホン難聴・ヘッドホン難聴は音の振動を電気信号に変えて脳に伝える「有毛細胞」が損傷することで起きます。音が外に漏れにくく、直接内耳に向かうため、損傷のリスクが高いといえるのです。

その特徴は少しずつ両耳の「聞こえ」が悪くなっていくこと。このため、初期には気付きにくく、難聴の自覚がないまま、じわじわと進行するおそれがあります。重症化すると聴力の回復が難しくなることもあり、そうしたリスクを理解して予防のための対策を講じることが大切です。

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WHOは80デシベルの音を週40時間以上聞き続けると、難聴の危険があるとしています。80デシベルは地下鉄の車内にいるときに感じる程度の音量。イヤホンやヘッドホンを利用するときには最大音量の60%程度以下を目安にしましょう。

利用は1日1時間以内にとどめるのが理想ですが、もしそれ以上の利用をする場合でも1時間に1回、10分程度の休憩を挟むように心がけましょう。また、周囲の騒音を抑えるノイズキャンセリング機能付きのイヤホン・ヘッドホンは音量を上げなくても音がよく聞こえるので難聴対策におすすめです。

なお、「聞こえ」が悪くなるなど少しでも異常を感じたら早めに耳鼻咽喉科を受診してください。

※原沢製薬工業株式会社プレスリリース「コロナ禍におけるイヤフォン使用と耳のトラブルに関する調査」(2021年6月30日)

小川 郁

監修/小川 郁(かおる)

慶應義塾大学医学部耳鼻咽喉科教授を経て同大名誉教授。オトクリニック東京院長。専門は聴覚障害の予防・治療。

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