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健康コラム

Vol.111

丸わかり日本の医療制度と医療費の仕組み

2023.8.31

「皆保険」と「フリーアクセス」が特徴
どこまで負担増えるか今後の制度改革に注目

加入者が病気やけがに備えてお金(保険料)を出し合い、支え合う社会保険方式の日本の医療保険制度。日本はすべての人が何らかの公的医療保険に加入することを義務づけられた「国民皆保険」の国です。政府は社会保険方式を基本としつつ、公費も投じて皆保険を維持しています。

保険料の支払いと引き換えに交付される健康保険証を医療機関受診時に提示すると、かかった医療費の1~3割の自己負担額で済み、残りの7~9割分は医療機関からの請求に基づき、保険者が支払う仕組みです。自己負担割合は年齢と所得に応じて現在は下図のようになっています。義務教育就学後から70歳までは3割負担、70歳以上でも現役並みの所得がある人は3割負担です。

一方、全国どこの医療機関でも自由に選んで医療を受けられる「フリーアクセス」も日本の医療制度の特徴。海外では受診できる医療機関が制限されている国も少なくありません。

さて、私たちが加入している社会保険にはいくつかの種類があります。まず会社などに勤めている人を対象とする「健康保険(被用者保険)」と自営業者などを対象にした「国民健康保険(地域保険)」に大別。健康保険はさらに、主に中小企業の従業員とその被扶養者が加入する「協会けんぽ(全国健康保険協会)」、大手企業の従業員とその被扶養者が加入する「組合健保」、公務員とその被扶養者などが加入する「共済組合」に、国民健康保険は都道府県と市区町村が保険者となる「市町村国保」、医師や弁護士などの職業別組合が保険者となる「国保組合」に分かれます。

なお、75歳以上の人は全員、「後期高齢者医療制度」という別の医療保険に加入することになります。

高齢化などに伴う医療費の増加により医療保険財政は厳しさを増しており、国は制度改革を進めています。給付は高齢者中心、負担は現役世代中心というこれまでの社会保障の構造を見直し、「全世代型の社会保障制度」を構築するのが狙いです。

2022年10月には75歳以上の一定以上所得者の窓口負担が2割に引き上げられました(現役並み所得者はそれ以前から3割負担)。保険料についても段階的に引き上げられることが決まっています。

現役世代を含めて今後もさらに負担が増す可能性が高く、制度改革の動きに注目しておきましょう。

「聞こえる生活」を守るために

木村 憲洋

監修/木村 憲洋

医療施設勤務を経て高崎健康福祉大学健康福祉学部医療情報学科教授。専門は医療管理学・医療系社会学。

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