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健康コラム

Vol.112

限度額超過分を還付する高額療養費制度

2023.10.01

年間負担10万円超なら 医療費控除の適用も

日本では「国民皆保険」によりすべての人が公的医療保険の恩恵にあずかっていますが、それでも治療内容によっては自己負担が高額になることはあります。そうした際に負担を軽減する制度が「高額療養費制度」です。

1か月(毎月1日から末日まで)に支払った医療費の自己負担額が上限額を超えた場合に、その超えた額が還付される制度で、上限額は年齢(70歳以上と69歳以下)と所得水準に応じて定められています(69歳以下の上限額は表を参照)。

高額医療費制度の上限(69歳以下)

高額医療費制度の上限(69歳以下)

たとえば、年齢が50歳、年収が500万円の人で、1か月に50万円の医療費がかかった場合(自己負担額は3割負担で15万円)、表の計算式に当てはめると自己負担上限額は8万2430円。その結果、窓口で支払った自己負担額との差額である6万7570円が還付されることになります。なお、入院時の食費負担や差額ベッド代などは高額療養費の対象外であることには注意が必要です。

後から還付を受けるのではなく、窓口での支払い自体を自己負担限度額までとすることもできます。69歳以下の人の場合、あらかじめ加入する医療保険に申請して「限度額適用認定証」、または「限度額適用・標準負担額減額認定証」の交付を受けて医療機関の窓口に提出することが必要です。ただし「マイナ受付」に対応している医療機関の場合はマイナンバーカードか、健康保険証を提示して自身の情報提供に同意すれば、上記の「認定証」がなくても窓口負担を限度額までに抑えることができるようになりました。

高額療養費制度にはこのほか、同一世帯で同じ医療保険に加入している人の自己負担額を合算する「世帯合算」や過去12か月以内に3回以上、上限額に達した場合に4回目からさらに上限額が下がる「多数回該当」といった仕組みもあります。

一方、高額療養費制度を利用するなどしてもなお、同一生計の配偶者や親族などを含めて1年間に支払った医療費の自己負担額が10万円(総所得金額等が200万円未満の人は総所得金額等の5%の金額)を超えた場合は超えた分について200万円を上限に所得控除を受けることもできます(セルフメディケーション税制※との選択適用)。適用を受けるためには確定申告が必要ですので、忘れずに申告してほしいと思います。

※特定の医薬品(市販薬)の購入費が一定額を超えたときに所得控除を受けられる、医療費控除の特例。

木村 憲洋

監修/木村 憲洋

医療施設勤務を経て高崎健康福祉大学健康福祉学部医療情報学科教授。専門は医療管理学・医療系社会学。

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