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健康コラム

Vol.119

肥満症の治療や予防の新薬が登場

2024.05.01

適切使用が大前提 副作用にも注意を

肥満症の治療や予防に効果があるとされる2つの薬が2024年前半に相次いで登場しています。

前回ご説明したように、肥満症の治療は食事・運動・行動療法の3つを中心に進めるのが基本。しかし、それだけでは効果が上がらないことも少なくありません。そうした人に医師が処方して、週1回の皮下注射で症状の改善を目指す薬が、ノボノルディスクファーマの「セマグルチド(商品名・ウゴービ®皮下注)」です。

対象となるのは、肥満症患者のうち、高血圧・脂質異常症・2型糖尿病のいずれかを有し、食事療法・運動療法で十分な効果が得られず、さらに「BMIが27以上、かつ2つ以上の健康障害を有する」、または「BMI35以上」に該当する人。「GLP-1受容体作動薬」というジャンルに含まれる薬で、もともとは糖尿病の治療薬でしたが、肥満症への有効性や安全性が確認されて製造販売の承認を受けました。

脳に働きかけて食欲や胃の動きを抑制し、体重減少を促します。臨床試験では13%以上の体重減少と2型糖尿病・高血圧・脂質異常症の数値改善が認められました。使用法は、医師の処方や指導に基づき、ペン型の注射器で週1回、自己注射します。ただし、主な副作用として低血糖症状や吐き気、嘔吐などの消化器症状、急性膵炎、胆のう炎、胆管炎などが起きる場合があるとされているため、医師の指示のもとで使用することが重要です。

一方、肥満症を発症していない肥満の段階で、それを解消して肥満症を予防することを目指す市販薬が、大正製薬の「オルリスタット(商品名・アライ)」です。

対象は18歳以上で、腹囲が男性85センチ以上、女性90センチ以上の人。薬剤師の説明を聞いて購入する「要指導医薬品」に定められており、さらに食事や運動などの生活習慣の改善に3か月以上前から取り組んでいるなどの要件を満たした人にのみ販売するとしています。1日3回食事中や食後1時間以内に飲む薬で、脂肪分解酵素リパーゼの活性を阻害して食事で摂った脂肪が吸収されるのを抑制する効果があります。ただ、便や油を伴う放屁(おなら)や脂肪便などの副作用があることには注意が必要です。

現在、別の病気で通院していたり、薬を服用したりしている人は、主治医などとよく相談のうえで使用するようにしてください。

※「セマグルチド」は2月22日発売。「オルリスタット」は4月8日発売。ウゴービ®はNovo Nordisk A/Sの登録商標。

宮崎 滋

監修/宮崎 滋

東京医科歯科大学医学部卒。2015年から結核予防会総合健診推進センター所長。日本生活習慣病予防協会理事長。

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