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健康コラム

Vol.121

明らかになってきた飲酒量と病気の相関

2024.07.01

高血圧は少量飲酒でも発症のリスクを高める

前号で、自分の飲酒量を把握し、健康管理に活用するためには、お酒に含まれる純アルコール量(グラム)に着目することが重要であるとお伝えしました。そして、その量は「お酒の摂取量(ミリリットル)×アルコール濃度(度数/100)×0.8(アルコールの比重)」の計算式で求められることもご紹介したとおりです。

飲酒がさまざまな病気のリスクを高めることは内外の多くの研究で明らかになってきており、世界保健機関(WHO)はアルコールの有害な使用を低減するための世界戦略を策定し、その目標を定めた行動計画を発表しています。日本でも飲酒量と病気の発症リスクの関係を調べた研究が進んでおり、これまでにわかっている結果をまとめたのが下の表です。

たとえば、高血圧(男女とも)や男性の胃がん・食道がん、女性の出血性脳卒中に関しては、たとえ少量であっても飲酒自体が発症リスクを上げるとの結果を示した研究があります。また、大腸がん(男女とも)や男性の出血性脳卒中、女性の胃がんなどは1日20グラム程度(週150グラム)以上の飲酒を続けると、発症の可能性が高まるとの研究結果が出ています。

飲酒と疾患の関係には個人差があるため、これらより少ない量の飲酒を心がければ、発症しないとまでは言い切れませんが、その病気にかかる可能性を減らすことができると考えられています。一方で、飲酒の影響を受けやすい体質を考慮する必要がある人は、より少ない飲酒量(純アルコール量)に抑えるべきでしょう。かかりつけ医がいる人は飲酒についてよく相談することも有用です。

過度な飲酒によるリスクは、これまで述べてきたような病気発症の可能性を高めるだけにとどまりません。急激に多量のアルコールを摂取すると、急性アルコール中毒になって、意識レベルが低下し、嘔吐や呼吸状態の悪化など非常に危険な状態になる可能性があります。また、長期にわたる大量飲酒は、アルコール依存症のリスク要因。精神疾患の一種であり、お酒をやめたくてもやめられない、飲む量をコントロールできないなどの症状によって、仕事や生活面に支障を及ぼす可能性もある深刻な病気です。

このほか、不適切な行動によるけがや他人とのトラブル、貴重品の紛失といった行動面のリスクにもつながりかねず、そうした危険を防ぐためにも飲酒量の管理は重要です。

松下 幸生

監修/松下 幸生

独立行政法人国立病院機構久里浜医療センター院長。アルコール依存症・関連問題の専門家。

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