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健康コラム

Vol.122

自分に合った飲酒量の見極めを

2024.08.01

合間に水を飲むなど飲酒作法の工夫も大切

前号では、飲酒ががんや生活習慣病など種々の病気の発症リスクを高めるとする最近の研究成果についてお伝えしましたが、それでは私たちは日常の飲酒量(純アルコール量)をどの程度に抑えればいいのでしょうか。

下の表に、海外のガイドラインに記載のある飲酒量(純アルコール量)を抜粋しました。各国ごとに位置付けが異なる数値のため、単純比較はできませんが、1日平均に換算すると男性15~40グラム程度、女性10~20グラム程度が目安になっていることがわかり、国によってばらつきがあります。

一方、日本では本連載の1回目で、「1日あたりの純アルコール摂取量が男性40グラム以上、女性20グラム以上の者」の低減を目指すという国の政策を紹介しました。ただし、この「男性40グラム以上、女性20グラム以上」は「生活習慣病のリスクを高める量」として設定されている数値であり、個々人の許容量を示したものではありません。結論としていうと、飲酒の許容量を示す統一的な指標は存在しないということです。

飲酒による体などへの影響は、年齢・性別・体質・その日の体調などさまざまな要因によっても左右されますから、結局のところ、飲酒対策は、個々人が「自分に合った飲酒量を決めて、健康に配慮した飲酒を心がける」ことに尽きるといえるでしょう。

そのうえで、ガイドラインは以下のような留意事項を掲げています。

  • ①医師への相談やAUDITを参考にして、自らの飲酒の習慣を把握する
  • ②あらかじめ量を決めて飲酒する
  • ③飲酒前、または飲酒中に食事を摂る
  • ④飲酒の合間に水や炭酸水を飲む
  • ⑤1週間のうち、飲酒しない日を設ける

加えて、酒気帯び運転や20歳未満の飲酒などの法律違反行為、妊娠中・授乳中の人や体質的にお酒を受け付けられない人の飲酒などは厳に戒めるよう指摘。ほかにも避けるべき飲酒や飲酒関連行動として、一時多量飲酒(1回の飲酒機会で純アルコール量60グラム以上)、他人への飲酒の強要、不安や不眠を解消するための飲酒、病気療養中や服薬後の飲酒、飲酒中や飲酒後の運動・入浴など体に負担のかかる行動も挙げています。

近年、飲酒と健康に関する研究が進み、科学的知見の蓄積が進む一方、違法・迷惑行為につながる飲酒行動に対しても厳しい目が向けられるようになっています。適切なお酒との付き合い方を身につけましょう。

松下 幸生

監修/松下 幸生

独立行政法人国立病院機構久里浜医療センター院長。アルコール依存症・関連問題の専門家。

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