舌がんの治療は舌の切除が基本
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半分以上の切除は再建も必要 リハビリで機能回復を目指す
前回のコラムでもお伝えしたように、口のなかにできる口腔がんは歯肉(歯ぐき)や頬の粘膜、口腔底(舌の下面)など口内のいろいろな部分にできます。なかでも最も多いのが舌にできる舌がん。とくに60歳以上の男性に多く発症する傾向があり、これは口腔がんのリスクを高める飲酒や喫煙の習慣が、男性に多いことが原因ではないかと考えられています。しかし、歯の尖った部分がいつも当たることなどが要因となり、飲酒・喫煙習慣のない女性や若年層でも発症することがあるので、油断はできません。
そんな舌がんが最も発症しやすいのは、舌の左右両側面。早期では、口内炎と紛らわしい場合もありますが、しこりができたり、痛みが3週間以上も続いたりする場合は、医療機関を受診することをおすすめします。
最初は、最寄りの耳鼻咽喉科を受診し、がんの疑いがあれば、紹介状を書いてもらったうえで、より専門的な頭頸部外科などを受診。そこで、視診や触診、生検・細胞診などでがんの有無を確定し、さらにCTやMRIなどの画像検査で、進行の程度や他の部位への転移の有無などを調べます。
そのうえで治療方針を決めます。舌がんの治療は、手術でがんを切除するのが基本。再発のリスクを下げるために、がんだけでなく、がんの周囲の正常な部分を10ミリメートル以上含めて切除します。
がんが早期で小さい場合、切除範囲が小さい部分切除で済み、食事や発音・発声といった舌の機能への影響も限定的です。がんが大きくなるほど、半側切除(がんのある側を半分切除)、亜全摘(舌の半分以上を切除)、全摘(舌を全部切除)と、切除する範囲が大きくなり、舌の機能への影響も大きくなっていきます。
また、部分切除の場合は、切除後に残った舌を縫い合わせて形を整えますが、半側切除以上の場合は、舌の再建手術が必要です。おなかや太もも、腕などから採取した皮膚や筋肉ごと移植して、舌をつくり直します。
なお、手術後の病理検査結果により抗がん剤を併用した放射線治療を補助的に行う場合があります。
舌半側切除以上では、飲食したり、話をしたりする機能がどれくらい落ちているかを調べ、その程度に応じたリハビリが必要です。これには、食事する際の嚥下機能などを高めるリハビリと、発音・発声を取り戻すリハビリがあり、退院後も外来で指導を受けながらリハビリを続けることになります。