Vol.38
セルフメディケーション税制でちょっとお得に健康管理
2017.03.01
医療費控除の特例として「セルフメディケーション税制」がスタートしました。
医療費控除のハードルが高くてこれまでは利用できなかった人でも、指定された市販薬を購入した分で税金の還付が受けられるかも!?
■セルフメディケーション税制ってどんなもの?
ドラッグストアなどで、店頭に並ぶ薬品の中に「セルフメディケーション税控除対象」のマークがついているものをご覧になったことはないでしょうか?
2017年1月1日より、医療費控除の特例となる「セルフメディケーション税制」がスタートし、マーク付きの医薬品を一定以上購入した際に、税金の還付が受けられるようになりました。
「セルフメディケーション」という言葉自体、あまり聞きなれないと思いますが、世界保健機関(WHO)の定義では「自分の健康に責任を持ち、軽い身体の不調は自分で手当てすること」だそうです。
「セルフメディケーション税制」は、健康増進や病気予防に取り組んでいる人が、自分や家族(生計同一の親族)のために対象となる医薬品を購入した場合に、所得控除を受けることができる制度です。
ちなみに、期間は今のところ2021年12月31日までの5年間となっています。
医療費控除については過去コラム
「ご存知ですか?介護費の一部も医療費控除の対象です」にも書きましたが、1年間に支払った医療費の合計が10万円(所得200万円以下は所得の5%)を超えた場合に、その超えた分を所得から控除し税金の還付を受けることができるものです。
とはいえ、10万円だとハードルが高くて利用できない人もいます。
「セルフメディケーション税制」は、該当する市販薬を1万2,000円以上購入した場合に超えた分の控除が受けられ(最高8万8,000円まで)、利用しやすくなっています。医療費控除も「セルフメディケーション税制」も該当する場合は、どちらか一方を選択することになります。
■対象となる医薬品は?
「セルフメディケーション税制」を利用するには、購入した医療品が厚生労働省が指定した「スイッチOTC医薬品」でなければなりません。これは医療用から一般用に切り替えられた医薬品を指し、2017年1月13日時点では、成分数で83あります。その中には、薬効でいうと、かぜ薬や胃腸薬、鼻炎用内服薬、水虫・たむし用薬 、肩こり・腰痛・関節痛の貼付薬などが含まれます。
2017年1月時点のセルフメディケーション税制対象となる医薬品は厚生労働省のウェブサイトで確認することができます。
【参照】2017年1月時点のセルフメディケーション税制対象品目一覧(厚生労働省)
前述のように、ドラッグストアなどでは「セルフメディケーション税控除対象」マークが表示されています。購入した際には、レシートもチェックしてみてください。対象商品は必ずレシートに印字されています。
■対象となる人は?
医療費控除は原則、誰でも該当しますが、「セルフメディケーション税制」の方は対象者が限られます。「適切な健康管理の下で医療用医薬品からの代替を進める」という目的で行われ、対象も「健康の維持増進及び疾病の予防への取組として一定の取組を行う個人」とされています。
具体的には、同一年度内に次のいずれかを受けた人という条件が付きます。定期健診や特定健診も対象ですし、予防接種、がん検診などいずれかを受ければ該当しますので、多くの人は対象になることでしょう。
対象は下記いずれかの受診者
- ・特定健康診査(40歳以上)
- ・予防接種
- ・定期健康診断
- ・健康診査
- ・がん検診
確定申告の際には、この健診などを受けたことを証明する書類なども提出・提示する必要があるため、しっかり保存しておきましょう。
【参照】「一定の取組」とその証明方法(厚生労働省)
■セルフメディケーション税制でいくら戻る?
「セルフメディケーション税制」を活用した場合、いくらくらい戻るのでしょうか。一例を挙げてみましょう。
例えば、課税所得400万円(所得税率20%)のAさんが、家族で1年の間に3万2,000円の対象医薬品を購入したとします。職場の健診も受けていれば、セルフメディケーション税制の対象になります。
控除額は対象医薬品額が1万2,000円を超えた分となるため、3万2,000円から1万2,000円を引いて、2万円となります。この2万円に対する減税額は、所得税率20%で4,000円、住民税率10%で2,000円、合計6,000円。確定申告をすれば、この分が戻ります。
所得税率は課税所得によって異なります(源泉徴収票で確認できます)。
ご自身の税率がわかればその税率で計算しましょう。
■健診等の記録や領収書は保存を!
最終的に医療費控除の対象になるのか、「セルフメディケーション税制」の対象なのか不明な間は、とにかく健診等の記録や市販薬を購入した領収書類は保存しておく必要があります。もちろん、最終的に10万円のハードルを越えて医療費控除を受ける可能性もあるので、病院で支払った医療費や、通院のための交通費なども記録しておきましょう。
医療費控除の対象になるかどうか不明な間は、できるだけ市販薬は「セルフメディケーション税制」の対象商品を購入するといいでしょう。
【参照】厚生労働省「セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)について」
国税庁「特定一般用医薬品等購入費を支払ったとき(医療費控除の特例)【セルフメディケーション税制】
ファイナンシャルプランナー 豊田眞弓
バックナンバー
- Vol.130 年末調整と確定申告
2024.10.31
- Vol.129 正しい給与明細書の見方
2024.10.01
- Vol.128 家計簿を付けるメリットと長続きさせる“手抜き”技
2024.9.01
- Vol.127 ルールを決めてお金の管理を!
2024.8.01
- Vol.126 家計のムダを減らす 節約のヒント
2024.7.01
- Vol.125 収入に合わせて予算を決め、予算内でやりくりする
2024.6.01
- Vol.124 人生にかかるお金はいくら?
2024.5.01
- Vol.123 もっと学びを 金融リテラシーが求められる時代
2024.4.01
- Vol.122 雇用保険に注目 リスキリングに手厚い支援
2024.03.01
- Vol.121 相続時にメリット 生命保険を賢く活用しよう
2024.02.01
- Vol.120 資産形成の第一歩
2024.01.01
- Vol.119 源泉徴収票を理解する
2023.12.01
- Vol.118 離婚することになったとき決めておくべき 3つの重要事項
2023.11.01
- Vol.117 1年未納で年に約2万円減 国民年金は満額受け取れますか?
2023.10.01
- Vol.116 会社員要注目!知っておきたい所得控除3選
2023.8.31
- Vol.115 関東大震災から100年 地震保険に加入していますか
2023.8.01
- Vol.114 進化するがん治療への備え 多様ながん保険 じっくり検討を
2023.7.01
- Vol.113 安心・安全なカーライフのために 自動車事故への備えをチェック
2023.6.01
- Vol.112 認知症への備え 成年後見制度でお金の管理を
2023.5.01
- Vol.111 2024年1月以降の贈与から使い勝手が向上 相続時精算課税
2023.4.01
- Vol.110 2024年から新制度に移行 新しいNISAで何が変わる?
2023.3.01
- Vol.109 公的制度を上手に活用 仕事と介護の両立を目指す
2023.2.01
- Vol.108 安心して赤ちゃんを産むために 出産に伴う休みとお金の話
2023.1.01
- Vol.107 気楽に書き始める エンディングノートのすすめ
2022.12.01
- Vol.106 会社勤めの冬の風物詩 年末調整って 何だろう?
2022.11.01
- Vol.105 変わる葬儀のスタイル 家族葬が増加 費用は低下傾向
2022.10.01
- Vol.104 法務局に預けて安心 自筆遺言作成のハードルが低下
2022.9.01
- Vol.103 「値上げ時代」を賢く生きる お財布に優しい省エネ・節電ライフ
2022.8.01
- Vol.102 家族の死亡時に保険契約の有無を照会できる生命保険協会の契約照会制度
2022.7.01
- Vol.101 10月から「106万円の壁」の適用範囲が拡大
2022.6.01
- Vol.100 これからの働き方・稼ぎ方を考える 「所得の分散」で実収入を増やす
2022.5.01
- Vol.99 資産を2倍にするのにかかる期間は? おおよその年数がわかる「72の法則」
2022.4.01
- Vol.98 高校の新学習指導要領始まる 家庭科の授業で投資信託を学ぶ
2022.3.01
- Vol.97 病気やけがで障がいが残ったら 程度に応じて年金・一時金が受給可能
2022.2.01
- Vol.96 支給期間が「通算1年6か月」に延長 傷病手当金の使い勝手が向上
2022.1.01
- Vol.95 年金ライフの選択の幅が広がる 受給開始を75歳まで繰り下げ可能に
2021.12.01
- Vol.94 知っておいてほしい 専業主婦(夫)の年金事情
2021.11.01
- Vol.93 ねんきんネットを活用しよう!
2021.10.01
- Vol.92 公的年金制度の仕組み
2021.09.01
- Vol.91 「ふるさと納税」のメリットは?
2021.08.01
- Vol.90 上手に貯めて使いたいマイル
2021.07.01
- Vol.89 新型コロナ禍の家計防衛術
2021.06.01
- Vol.88 投資商品選びのアドバイス
2021.05.01
- Vol.87 つみたてNISAやiDeCoにも採用されている定額購入法の長所と短所
2021.04.01
- Vol.86 2021年4月から「70歳雇用」が企業の努力義務に。何がどう変わる?
2021.03.01
- Vol.85 年末調整で手続きを忘れても確定申告でできる!生命保険料控除はしっかり活用を
2021.2.01
- Vol.84 コロナ禍でリフォームをする際も「減税」を活用しよう!
2021.01.01
- Vol.83 ボーナスが減ってもやっていける強い家計の作り方
2020.12.11
- Vol.82 高額介護サービス費制度が2020年8月から一部変更に。どのような影響がある?
2020.11.01
- Vol.81 2020年10月から酒税変更でビールが減税に!その他の発泡酒やワインは増税!?
2020.10.01
- Vol.80 もしも自然災害に遭ってしまったときのお金の話
2020.09.11
- Vol.79 年金改正法成立と、私たちの生活への影響
2020.08.01
- Vol.78 会社員が副業を始める前に注意しておきたいポイントをご紹介
2020.07.01
- Vol.77 マイナンバーカードによる消費活性化策、マイナポイントがスタート!
2020.06.01
- Vol.76 生涯現役に向けて資格を取ろう!雇用保険の「教育訓練給付制度」
2020.05.01
- Vol.75 2020年4月から「同一労働同一賃金」がスタート。何が変わる?
2020.04.01
- Vol.74 「家計の金融行動に関する世論調査」でわかる年代別平均貯蓄額は?
2020.03.01
- Vol.73 生命保険の付帯サービスって意外に役立つ!
2020.02.01
- Vol.72 知っトク家族信託!上手に活用しよう
2020.01.01
- Vol.71 保険金や給付金の請求漏れを防ぐには?
2019.12.01
- Vol.70 消費増税で高齢者に関する介護・年金にどんな変化が?
2019.11.01
- Vol.69 60代でもキャッシュレス決済に挑戦!税金のポイントをゲットしよう
2019.10.01
- Vol.68 「あげすぎ」にご用心!生前贈与を整理しておこう
2019.09.01
- Vol.67 持病も増える50代以降。医療費を節約する7つの方法
2019.08.01
- Vol.66 海外滞在中の病気やケガ、死亡でも生命保険は備えられる?
2019.07.01
- Vol.65 おひとり様が不安なく楽しい老後を過ごすには?
2019.06.01
- Vol.64 これからの時代とっても大事。金融リテラシーを身に付けよう!
2019.05.01
- Vol.63 住宅ローン控除の拡大などで住宅取得はいつが有利に?
2019.04.01
- Vol.62 3~5歳児の幼児教育・保育の無償化で教育資金の貯め方は変わる?
2019.03.01
- Vol.61 知っトク!相続に関わる民法改正のポイント
2019.02.01
- Vol.60 2019年、消費増税でどうなる?どうする?わが家の家計
2019.01.10
- Vol.59 まだ間に合う!年末までにやっておきたい家計のツボ
2018.12.01
- Vol.58 高齢期の働き方はココに注意!
2018.11.01
- Vol.57 「ハイパーインフレ」ってどんなもの?備えるには?
2018.10.10
- Vol.56 保険はどんなときに見直しますか?
2018.09.01
- Vol.55 人生100年時代。老後資金への備えは複合的に!
2018.08.01
- Vol.54 介護保険、2018年8月から高所得者が3割負担に!
2018.07.01
- Vol.53 医療費はどのくらいかかる?(2)
2018.06.01
- Vol.52 医療費はどのくらいかかる?(1)
2018.05.01
- Vol.51 40~50代は「責任世代」。将来も見据えてどんな病気・ケガに備えるべき?
2018.04.01
- Vol.50 人生100年時代。資産形成の1つの方法として「つみたてNISA」を始めませんか?
2018.03.01
- Vol.49 配偶者控除・配偶者特別控除が改正に。妻の働き方はどうなる?
2018.02.01
- Vol.48 実はトラブルも多い!?成年後見制度を活用するポイントは?
2018.01.01
- Vol.47 ふるさと納税で応援したい自治体をサポートしてお礼をゲット
2017.12.01
- Vol.46 大学時代の教育資金をサポートする制度
2017.11.01
- Vol.45 雇用保険の教育訓練給付制度で退職後の武器をつくろう!
2017.10.01
- Vol.44 知っておくと安心!?契約者貸付制度のしくみ
2017.09.01
- Vol.43 個人型確定拠出年金「iDeCo」は本当におトクなの?
2017.08.01
- Vol.42 「高齢者」の定義が65歳⇒75歳になるとどうなる?
2017.07.01
- Vol.41 日本人の平均貯蓄額は1,600万円ってホント?
2017.06.01
- Vol.40 増える医療の自己負担。今度は高齢者の「高額療養費制度」が変更に!
2017.05.01
- Vol.39 年金制度改革でもらえる年金がさらに目減りする!?
2017.04.01
- Vol.38 セルフメディケーション税制でちょっとお得に健康管理
2017.03.01
- Vol.37 確定申告でもマイナンバーが必要に!
2017.02.01
- Vol.36 ご存知ですか?介護費の一部も医療費控除の対象です
2017.01.01
- Vol.35 70代になったら考えてもらおう!親の終活
2016.12.01
- Vol.34 40代から考えよう!自分のセカンドライフと終活
2016.11.01
- Vol.33 外貨建て資産との上手な付き合い方
2016.10.01
- Vol.32 マイナス金利時代の老後資金準備はどうなる?
2016.09.01
- Vol.31 自分の年代の病気やケガのリスクを知っていますか?
2016.08.01
- Vol.30 4月からスタートした「患者申出療養」について知ろう!
2016.07.01
- Vol.29 40代、50代は家計の曲がり角!? 子育てにめどがついたら生命保険の見直しを!
2016.06.01
- Vol.28 40代、50代は家計の曲がり角!? 老後資金準備のために、住宅ローンは55歳完済を目指せ!
2016.05.01
- Vol.27 40代、50代は家計の曲がり角!? アラフィフ家計の漬物石!? 教育費負担を見直す
2016.04.01
- Vol.26 40代、50代は家計の曲がり角!? 老後破綻を回避する、今からできる7つの方法
2016.03.01
- Vol.25 40代、50代は家計の曲がり角!?あなたのセカンドライフ「夫婦で3,000万円」で足りますか?
2016.02.01
- Vol.24 40代、50代は家計の曲がり角!?はまっていませんか?アラフィフ世代の家計のワナ
2016.01.01