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マネーコラム

Vol.53

医療費はどのくらいかかる?(2)

2018.06.01

前回は、「医療費はどのくらいかかる?(1)」というテーマで、調査データと高額療養費制度についてみてきました。今回は、高額療養費制度の対象とならず、医療費を膨らませる可能性がある、差額ベッド代や先進医療等について解説します。

●差額ベッド代は医療費がかさむ原因の1つ

入院時に、医療費や食事代以外にかかるものとして差額ベッド代があります。差額ベッド代は、6人以上の大部屋に入院する場合は公的医療保険の対象になるのでかかりませんが、個室や少人数の部屋を希望した場合は、大部屋との差額料金は自己負担になります。差額ベッド代がかかる部屋に入院した場合、入院期間が長くなるほど医療費は高額になってしまいます。

差額ベッド代は、病院や何人部屋かなどによって異なります。差額ベッド代がかかるのは全病床の20.6%で、平均額は6,144円です(平成28年7月現在、厚生労働省「主な選定療養に係る報告状況」平成29年)。部屋タイプ別の平均額は表1に整理しましたが、1人部屋だと平均で1泊8,000円弱かかります。最高額ではなんと37万8,000円という部屋もあるというのは驚きですね。

表1 平成28年7月1日現在の差額ベッド代

個室や少人数の部屋は、患者自身が静かにゆっくり療養したいと希望する場合に利用するほか、乳幼児が家族にいたり、お見舞いの客が多いと思われる場合に他の入院患者への配慮から利用を希望することもあるようです。

ただし、診療のために必要な場合や、大部屋が空いていないために希望していないのに個室や少人数の部屋に入る場合などでは、負担しなくてもよいことになっています。「入院するときは個室か少人数の部屋がいい」と希望する人は、差額ベッド代が出せるように、医療保険の入院日額を高めに設定しておくとよいでしょう。

●先進医療で高額化するケースも!?

ただし、診察料、検査料、投薬料、入院料などは公的医療保険が適用されるため、この部分については高額療養費制度の対象となります。

「先進医療」の中にも、技術料が高額化するものがあります。先進医療とは、国の施設基準を満たした特定の医療機関で行われる高度な医療技術を用いた先端医療のうち、厚生労働大臣の承認を受けたものをいいます。新しい技術を用いた医療である一方、保険診療の対象になるかどうか評価される過程の医療技術も含まれます。先進医療の技術料は全額自己負担となります。

先進医療として認められているものは、平成30年4月1日現在で91種類あります。表2に件数として多い4種類と平均費用を紹介しましたが、最も多いのは「多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術」です。一方、件数も上位で費用が高額になるものとしては、ガン治療で用いられる「陽子線治療」や「重粒子線治療」で、1クールの治療で300万円前後かかっています。

先進医療は毎年評価され、ときには見直されています。「有効性が低い」と判断されると次年度は先進医療から外されることもあります。逆に、別の医療技術が加わることもあります。また、有効性が認められたことで、保険診療の技術に加わることもあります。実際、2017年4月から小児ガンなどに対する陽子線治療が保険診療に加わっています。

表2 先進医療の例

ちなみに、先進医療に該当する診療は保険適用ではありませんので、その技術料は全額自己負担になります。先進医療を厚生労働省が認めた医療機関で受けた場合は、技術料以外の診察や検査、入院費等は保険適用となり負担が軽減されます。保険適用の場合、高額療養費も適用され、さらに軽減を受けることができます(表3)。

表3 先進医療を受けた場合の医療費の負担イメージ

●先進医療に備えるには先進医療特約

先進医療は定期的に入替えがあり、今後も高額なものが加わらないとはいえません。こうした先進医療を選択できるようにしておくには、医療保険やがん保険に先進医療特約を付けておけば安心です。保険料は数百円程度ですので、余力があれば付けておきたいもの。

ガン保険はガンに絞り込んだ保険のため、先進医療特約もガン治療の先進医療のみに限定されます。医療保険とガン保険の両方に入る場合は、ガン保険より保障が広い医療保険に先進医療特約を付けておくとよいでしょう。

なお、2016年4月からスタートした「患者申出療養」も全額自己負担で、高額になることもあり得るものの1つです。こちらは過去コラム、「患者申出療養について知ろう!」を参照してください。

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