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健康コラム

Vol.36

日記を書くだけで健康になれる?!

2017.06.01

毎年6月12日が「日記の日」ということを知っていましたか?
第二次世界大戦中の1942年(昭和17年)のこの日、ユダヤ系ドイツ人の少女アンネ・フランクが「アンネの日記」を書き始めたということで、日記の日として制定されました。戦時中といった不安定な時代だからこそ、アンネにとって日記が必要だったのかもしれません。
今回は、日記が心身に与える影響について考えます。

日記とは、その日1日の出来事や感想など書いた記録のことをいい、基本的に人に見せることを前提としていません。
いまは、手軽につけられる日記アプリが数多くありますが、今回は紙にペンで書くというアナログタイプの日記を念頭に話をすすめていきます。

■日記を書くことの効果

1.脳トレになる

1日の終わりに、今日どんなことがあって、どう感じたのか、また、体調はどうだったか、などについて思い出すことは想起トレーニング(思い出す訓練)になります。主に認知症予防に役立つとされている訓練方法で、脳が活性化し、老化を防ぐとされています。認知症は、将来的に寝たきりの状態を引き起こすこともあり、健康寿命(健康上の問題がない状態で日常生活を送れる期間)を短くする要因のひとつ。
では、日記を書くことが、どうして脳を活性化させるのでしょうか?

大脳を上から見ると、「右脳」と「左脳」に分かれ、それぞれの役割を持ちつつ、左右をつなぐ「脳梁」という橋を通して、お互い連携しながら働いています。
一般的に、左脳が言語を司り、右脳はイメージが得意だといわれています。
日記を書くとき、まず、今日あったことを右脳でイメージします。
そして、左脳の働きで、文字にしてまとめます。パソコンだと自動変換される漢字も思い出そうと努力したり、時には調べたりもするでしょう。
つまり、日記を書くという作業は、脳全体を使った知的作業だといえるのです。

2.セルフメンテナンスができる

脳を鍛えられるだけではありません。
日記は自分の心や身体と向き合うきっかけにもなります。

  • ①自分を客観視することができる
  • 日記によって、その日1日の自分の行動や感情、体調などを振り返ることによって、自分を客観的に観察することができます。
    自分は、どんなことを不安に感じて、どんなことを大切にしているのか、または、心身を壊しやすい季節や曜日などの傾向はないか、などについて、自分と少し距離を置いて自分を見つめることができるのです。
    そうすることで、落ち着いて物事を考えることができ、安心します。
    このような状態は、次に述べる「副交感神経優位の状態」にもつながります。

  • ②自立神経を整えることができる
  • 順天堂大学医学部教授の小林弘幸先生は、その著書(「『3行日記』を書くと、なぜ健康になれるのか?」株式会社アスコム)のなかで、「病気になる、体調が崩れる、夜眠れなくなる、無性にイライラするなど、すべての不調は自律神経のバランスの乱れから来ています」と前置きをし、「『日記をつける』という行動は、1日の生活リズムをオンからオフに切り替えるスイッチのようなもの」と述べられています。
    オンの状態というのは交感神経優位の状態(活動モード)で、オフの状態は副交感神経優位の状態(休息モード)のこと。
    自律神経には交感神経と副交感神経の2つがあり、人間のほとんどの臓器はこの2つの神経がバランスをとりながらコントロールしているのですが、ストレスが多い現代人は、交感神経優位に傾きやすいという傾向があります。
    よって、寝る前の日記習慣で意識的にバランスを整えることが大切なのです。

表:自律神経(交感神経と副交感神経)の働きについて

実は、日記が心身の健康に良い影響を及ぼすということは、世界中の数多くの研究結果が実証しており、実際の医療現場においても患者さんに日記をすすめることがあります。
「日記治療」や「日記療法」などという言葉が存在するほどです。

■何を書くのか?

ここまでで、日記が心身の影響に良い影響を与えるということをお伝えしてきましたが、次はより効果的な日記の書き方についてお伝えします。
前述した小林教授によると、1行×3テーマがベストとのこと。
その3つのテーマというのは、

  • ①「いちばんの失敗(もしくは、体調が悪かったこと、嫌だったこと)」
  • ②「いちばんの感動(もしくは、うれしかったこと)」
  • ③「明日の目標(もしくは、いちばん関心があること)」

自律神経が上げ下げの判断材料としているのが「過去」と「未来」ということだそうで、日記を書くときに「今日のこと」と「明日のこと」を思い浮かべると、自律神経の調整機能のスイッチが入りやすいとのことです。

■最後に

費用も手間もさほどかからず、今日からすぐ実践できる日記という健康法。
いかがでしたか?
冒頭にご紹介したアンネは、父親から誕生日プレゼントとして贈られたサイン帳に日記を書いたとされています。
みなさんも、健康でいて欲しい誰かのために、日記の日に日記帳をプレゼントしてみてはいかがですか?

ファイナンシャルプランナー 萩原 有紀

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