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健康コラム

Vol.43

「風邪を正しく理解しよう」

2018.01.01

1月9日は「風邪の日」。1795年(寛政7年)のこの日に、当時63連勝という大記録を持っていた横綱の谷風梶之助がインフルエンザで亡くなったことが由来です。
風邪と一口に言っても、原因も症状も様々。
今回は、風邪のイロハについてお伝えします。風邪を正しく理解することで、予防や治療に役立てることができます。

■風邪という病名はない?!

病院で医師から「風邪ですね」と告げられた経験がある人は多いことでしょう。しかし、実は「風邪」という病名は存在しないというのをご存知ですか? 風邪の正式な呼び名は「風邪症候群」。ほかに、「感冒」や「急性上気道炎」と呼ばれることも。
この「急性上気道炎」という呼び名は、風邪の症状をよく言い表しています。
気道は、上気道(鼻腔・咽頭・喉頭)と、下気道(気管・気管支・肺)に分けられます。この上気道に炎症が起こっている状態が、いわゆる風邪なのです。上気道に炎症があると、鼻炎(鼻水や鼻づまり)や喉頭炎(喉の痛みや痰、咳)、発熱などの症状が現れます。
ちなみに、炎症が下気道に及ぶと、気管支炎や肺炎と診断されます。
では、上気道に炎症を起こす原因というのは何なのでしょうか?

■風邪症候群の病原は?

ほとんどの風邪症候群は様々なウイルスの感染によって引き起こされます。
ウイルス以外では、各種細菌、クラミジア、マイコプラズマなどの感染によっても起こります。
また、寒さや空気の乾燥、化学物質の吸入やアレルギーなどの非感染性因子によって引き起こされるケースもあります。

表:風邪の病原まとめ

■風邪症候群に効く薬はない?

医師や看護師、薬剤師などの医療従事者は、風邪薬を飲まないという人が多いです。それは、風邪症候群に効く薬がないということを知っているからでしょう。風邪症候群と診断されて、病院で処方されることの多い抗生物質は、細菌にしか効果がありません。風邪症候群の原因の大半を占めるウイルスに効く薬はほとんどないのです。
しかし、ウイルスがきっかけで起こる諸症状を軽くする薬ならあります。
たとえば、鼻水や鼻づまりに対しては抗ヒスタミン剤が処方され、また、喉の痛みには消炎鎮痛剤、そして、発熱や頭痛、関節痛などには解熱鎮痛剤が処方されるというように、症状に応じた処方の余地はあります。
市販の総合感冒薬は、これらの成分が総合的に配合された薬です。この薬は風邪症候群の原因(ウイルス)に効くのではなく、風邪症候群の諸症状に効くのです。

確かに、風邪症候群の諸症状は辛いもの。咳や鼻水、発熱などの症状は、仕事や家事に差し障るため、薬で抑えたくなるのも当然です。
しかし、症状を抑えることは、風邪症候群を治すという点においては逆効果となってしまうことがあります。
鼻水や咳は、体内のウイルスを排出してくれます。また、熱を上げることで、ウイルスを弱体化させてくれます。いずれも、人間の持つ自然治癒力です。自己判断で咳止めや解熱剤を安易に使うのはやめた方がよいでしょう。

■風邪症候群の治療法は?

風邪症候群の治療法は、保湿と栄養と安静に尽きます。つまり、人間の持つ自然治癒力を助けるという方法です。

①保湿

喉が乾燥していると、ウイルスが活性化しやすくなります。また、喉の痛みや咳は乾燥で悪化します。
喉の乾燥を防ぐために有効なのがマスク。マスクを装着することで、吐いた息のスチーム効果で喉の湿度が保たれます。
マスクと合わせて、こまめに水分補給することも大事です。

Vol32「インフルエンザ予防のカギは◯◯の湿度」も合わせて読んでみてください。

②栄養

風邪症候群のときの食事で真っ先に思い浮かぶのが「卵がゆ」。
お粥は、食欲がないときでも食べやすく、消化に良いです。そこへ、タンパク質やビタミン類が豊富な卵を加えると、栄養価がグッと高まります。免疫力を高めてくれる必須アミノ酸がバランス良く含まれている卵は、風邪で弱った身体にぴったりの栄養といえるでしょう。

③安静

保湿に心がけ、栄養を摂っていても、仕事や家事で身体を動かしていては風邪症候群の治癒は遅れます。風邪症候群の一番の薬は身体を休ませることです。
とは言いつつも、この安静が最も難しいということは私自身よく解っています。特に、仕事を休むことによる損失を考えると、ついつい無理をしてしまいがち。

■風邪症候群による経済的損失

少し古いデータですが、ライオン株式会社「現代人のかぜとの付き合い方に関する実態調査」(2011年)によると、人が風邪症候群にかかったとき、損したと思う平均金額は21,720円とのこと。損失額の設定理由としては、「会社を休んだ日の日給」、「体調不良による仕事や家事の効率低下」、「薬の購入代とその手間」などが挙げられています。
風邪症候群による経済的損失は大きいようですが、症状が軽いうちに、安静・保湿・栄養を心がければ、会社を休む日数が短くて済みます。無駄な診察や投薬を避けることで医療費が削減されます。
風邪を正しく理解し、体調の悪化も経済的損失も最小限に抑えましょう。

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