Vol.132
健康コラム

多様な病気が引き起こす めまいのタイプと治療法

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加齢によって増加するめまい 女性の発症率は男性の倍以上

めまいとは、体の平衡感覚に異常をきたし、自分の体や周囲のものなどが、実際は動いていないのに、動いているように感じられる症状のこと。ぐるぐると目が回る「回転性のめまい」、体がふわふわ浮いているように感じる「浮動性のめまい」、くらっとする「立ちくらみ」の3つに大別されます。

厚生労働省の2022(令和4)年国民生活基礎調査によると、めまいの自覚症状がある人の人口1000人あたりの割合は20.3人。年齢とともに増加する傾向があり、65歳以上では30.0人に増えます。また、男女別(全年齢)では、女性(27.6人)が男性(12.5人)を2倍以上、上回っています。

めまいの原因は多岐にわたり、内科などを受診して「原因不明」とされることも少なくありません。そうしたなか、多く見られるのが耳の病気が原因のめまい。耳の奥の内耳にあり、平衡感覚をつかさどっている前庭や三半規管に問題が起きて発症する病気がそれです。

その病気のなかで最も多いのが良性発作性頭位めまい症。頭の位置を変えたときに突然、短時間のめまいが起こる病気で、内耳の耳石器という器官に付着している小さな結晶がはがれ落ち、三半規管に入り込むことが原因と考えられます。

メニエール病も耳の病気の代表例。内耳にリンパ液が過剰に溜まるのが原因で、めまいのほか、耳鳴りや難聴が繰り返し起こるのが特徴です。このほか、突然耳が聞こえにくくなる突発性難聴や、体の平衡維持にかかわる前庭神経に炎症が起こる前庭神経炎なども、めまいの原因となる耳の病気です。

めまいの原因が脳の病気の場合もあります。なかでも危険なのが、脳梗塞や脳出血、くも膜下出血などの脳卒中。めまいのほか、激しい頭痛や体の麻痺、ろれつが回らないなどの症状が出たら、脳卒中の可能性があるので、すみやかに医療機関を受診してください。

このほか、頭蓋内にできるがんである脳腫瘍や、脳の血管の拡張が原因で起きると考えられている片頭痛もめまいを起こす原因となります。

一方、耳や脳以外の病気が原因となるのが、立ち上がったときに血圧が低下する起立性低血圧や、3か月以上続く慢性のめまいである持続性知覚性姿勢誘発めまい症(PPPD)などです。

原因が多岐にわたるめまいですが、医療機関で何科を受診すれば良いのか、迷うことがあるかもしれません。前述した脳卒中のような急を要する病気が疑われる場合以外は、まず耳鼻咽喉科を受診してください。また、めまい外来など専門外来を掲げている医療機関があれば、そちらを受診するのも良いでしょう。

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五島 史行

東海大学医学部医学科専門診療学系耳鼻咽喉科・頭頸部外科学教授。専門はめまい平衡医学、神経耳科、耳鼻咽喉科心身症。