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健康コラム

Vol.80

足を守る予防ケア

2021.02.01

寒い季節は足元が冷えます。寒くてあまり動かないため、冷えるのも仕方がないと見過ごしてしまっていませんか?単なる冷えだと思っていた症状が、実は身体からの危険信号ということがあります。
今回は、2月10日フットケアの日にちなんで、足から健康を考えてみたいと思います。

■足に症状が出る病気「下肢閉塞性動脈硬化症」とは

フットケアの日は、2012年に日本フットケア学会、日本下肢救済・足病学会、日本メドトロニックによって、足病変の予防・早期発見・早期治療の啓発を目的として制定されました。この背景には、「下肢閉塞性動脈硬化症」などの足病変が重症化して足を切断しなければならない患者さんたちの存在があります。

下肢閉塞性動脈硬化症とは、足の血管に起こる動脈硬化のことです。動脈硬化とは、血管が狭くなったり詰まったりして血液の流れが悪くなっている状態です。足に動脈硬化があるということは、心臓や脳などの動脈も同じ状態である可能性があり、心筋梗塞や狭心症、脳梗塞などの病気を引き起こす恐れもあります。

下肢閉塞性動脈硬化症の原因としては、動脈硬化症と同じく、糖尿病、高血圧、脂質異常症などです。

動脈硬化症・糖尿病・高血圧症・脂質異常症などはいずれも生活習慣病であるとされており、日本人の三大死因であるがん・脳血管疾患・心疾患、さらに脳血管疾患や心疾患の危険因子となります。

つまり、この下肢閉塞性動脈硬化症は、命にかかわる重大な病気なのです。

生活習慣病については、こちら(大樹生命健康コラムVol.71「メタボリックシンドローム予備群からの脱出」2020年5月1日公開の記事)を参考にしてください。

■下肢閉塞性動脈硬化症の症状を知って早期発見・予防

下肢閉塞性動脈硬化症は命にかかわる病気ですが、早期に発見すれば重大な結果を及ぼす前に予防・治療することが可能です。

早期発見の重要性を知っていただくために、病気がどのような経過をたどるのかを下表にまとめました。症状によって病期は4段階に分けられます。

表: 下肢閉塞性動脈硬化症の病期と症状

第4期のレベルまで達すると、足を切断しなければならないこともあります。第1期のレベルで早期発見できるよう、日頃から自分の足の状態を観察することが大切です。

■足の観察ポイントとケアの方法

自分の手は見る機会が多い半面、足をじっくり観察することは少ないのではないでしょうか?足の観察は、足を救うばかりでなく命をも救います。

そこで、足の5大観察ポイントをお伝えします。いずれも血流障害の有無の観察です。左右差があるかどうかに注意しながら観察してください。

①冷たさ
足に動脈硬化が起こると、血管が狭くなったり詰まったりして、足を流れる血液が不足します。足の血液が不足すること(血流障害)によって足が冷たくなります。

②色
血流障害を起こしていると、足の皮膚や爪の色が白や青、赤紫や青紫などの色になります。

③傷
血流障害により、末端に届く酸素や栄養素が不足すると、傷が治りにくくなります。最初は小さな傷であったとしても悪化しやすいので注意が必要です。

④毛
血流障害により、末端に届く酸素や栄養素が不足すると、毛が生えにくくなります。足の指や甲などの毛の生え方や毛量などを観察しましょう。

⑤爪
毛と同様、爪の伸びも悪くなります。また、爪の形が変形することもあります。
傷のもとになる伸びっぱなしの爪や、巻き爪、深爪は感染の原因となり、感染を起こせば潰瘍になるリスクも高まります。

■フットケアを日常に取り入れる

潰瘍など深刻なレベルにならないようにするためには、血糖や血圧のコントロールに加え、日頃からのフットケアが重要になってきます。
ポイントは、「温める」ことと、「清潔にする」ことです。

「温める」
温めることで血行が促進されます。初期であれば、温めることで症状が改善します。入浴は血管を拡張させてくれるので血流の改善を期待できますが、足で動脈硬化が起きているということは、全身で動脈硬化が起きている可能性があり、脳血管疾患や心疾患などの合併症の心配もあります。

全身浴(肩まで湯に浸かること)は心臓に負担がかかるため、部分浴(足浴)がおすすめです。

足浴については、こちら(大樹生命健康コラムVol.66「体調を崩しやすい季節に試してほしい部分浴」2019年12月1日公開の記事)を参考にしてください。

温める方法として、足浴以外にも湯たんぽや電気あんかがありますが、これらは使い方次第では低温やけどの原因となります。特に、皮膚に血流障害がある場合は低温やけどを起こしやすく、治りにくいとされています。湯たんぽや電気あんかを使う場合は、事前に布団に入れて温めておき、就寝時には使用しないようにしましょう。

「清潔にする」
古い角質を溜めておくと細菌が繁殖しやすくなり、水虫の原因にもなります。
また、角質が厚くなりすぎると、ひび割れて出血し、細菌が入る危険があるので、角質ケアをして足を清潔に保ちましょう。

角質ケアは、入浴(足浴)の際にヤスリをお湯につけながら行うと粉が飛び散りません。爪切りは入浴(足浴)後に行うとよいでしょう。特に高齢者の爪は固く変形していることが多く、握力や視力も弱っているため、皮膚を傷つけないためにも指導や援助など何らかのサポートが必要になるでしょう。
爪の形は角を切りすぎないスクエアカットにします。爪の角を切りすぎると巻き爪になりやすくなるからです。また、深爪にならないよう十分に気をつけましょう。巻き爪や深爪は細菌感染の原因になります。

フットケアに関する参考図書:中澤真弥著「看護の現場ですぐに役立つフットケアの基本スキル」秀和システム、2019年

■まとめ

今回お伝えした5大観察ポイント以外にも、しびれや痛みなどの自覚症状の観察も重要です。しびれや痛みがひどくなると、不自然な歩き方になり、膝痛や腰痛などを引き起こします。そのうち歩かなくなり、筋力が低下し、少しのことでつまずいたり骨折したりしやすくなります。寝たきりから認知症になれば健康寿命を縮めてしまいます。

そうならないためにも、症状が軽いうちに対処できるよう、足の観察を習慣づけましょう。靴下をはくとき、お風呂に入るとき、爪を切るときなど、定期的に行う日常動作と一緒のタイミングで足を観察するとよいでしょう。

「老いは足から」「足は第二の心臓」などは足が健康の要であることを表す言葉です。健康のためにも、足の観察とセルフケアを今日から始めましょう!

(執筆者:萩原有紀)

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